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私はたくさんの囚人の妻たちと会い、彼女たちが語る苦悩を聴き、また多くの証言も読みました。 そのうちの一人は、少しでも刑務所に近づこうと、毎日のように双眼鏡を手に人の家の敷地に入り込んで、 格子窓のむこうに夫と思われるシルエットを認め、眺めていました。また、看守に見られずに恋人と抱き合うため、 面会室にテーブルと椅子でにわか作りの小屋を築いた人もいました。また、ある女性は、夫の汚れた服を洗濯機に入れる前に、 あたかも性的な儀式のようにその匂いを嗅いだと言います。求める肉体の不在にたいして、 彼女たちに何が残されているといえるのでしょうか?盗み見、汗の匂い、衣服、面会時間に握り合う手、そして決して触れることの許されない勃起したペニス……。
メイテのキャラクターは、こうした妻たちの打ち明け話から生まれたのです。それは即座に、日々のシーン──ひたすらくり返し、待つこと、フラストレーション、希望の不在といったものが、それまでの人生と置きかわってしまった日々のシーンからなる物語の形に結びついたのです。
もちろん、ドキュメンタリーにならないようフィクションを入れてあります。それは、決して得られない妻を《空しく》求めなければならないという、有罪宣告を受けた男の孤独感に根付いているものです。そこには一種の狂気が芽生えています。
ヴァンサンを倒錯者とみなすことで人は安心するかもしれませんが、刑務所という所は、すべての性的欲望を倒錯に陥らせるシステムとも言えるのです。これがまさに私が映画で描きたかったことです。このようにうち捨てられた肉体のことを。 メイテは自由の身ですが、ヴァンサンへの愛に縛られた囚われの身に等しい。そんな自由を、いったいどうすればいいというのでしょうか?彼女はある意味では現実的で忠実な妻です。つい悪魔の誘惑に身を任せてしまったひとりの犠牲者なのです。
『待つ女』は、彼女の愛する男と、彼女を求め愛を交わす男の間で、揺れ動く女性の話です。こうした瞬間瞬間を捉えるために、私はごく短くシンプルで、言葉よりも沈黙が語りうるようなシーンで描きたかったのです。だから、身振りやたたずまい、視線や笑み、落ち込まぬように嘘をつく表情といったものを撮っていきました。そうした映像で、会話では不可能な、官能的で情動的な肉体の痕跡を感じ取れるようにしたかったのです。キャラクターたちは、心理学や注釈で説明するものではありません。彼らは試練に立ち向かい、彼らなりになんとか切り抜けるのです 。
Jean-Pascal Hattu ジャン=パスカル・アトゥ
ジャン=パスカル・アトゥは、ジャーナリストとして数年働いた後、ジャンヌ・モロー、イザベル・アジャー二、カトリーヌ・ドヌーブら錚々たる女優の起用で有名なアンドレ・テシネ監督の『野性の葦』(('94/Les Roseaux Sauvages(The Wild Reeds)と『夜の子供たち』('96)/Les Voleurs(Thieves)で、アシスタント・ディレクターとして活動。その後、『Coma』('95年)、『Au Dessus De La Mer(Above the sea)』('97)、『Cadeaux(Gifts』(2000)の3本の短編映画を監督する。また、『Gardez Le Sourire(Keep Smiling)』をはじめ、10本のドキュメンタリー作品の監督も手がけている。若い女性看守を描いた『Gardez Le Sourire』は、今回の初監督作品『待つ女』に大きな影響を与えた。
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